9月14日より、東京国立近代美術館工芸館にて開催中の「インゲヤード・ローマン展」。スウェーデンを代表するデザイナー、インゲヤード・ローマンさんのインタビューをお届けします。新しい素材があると、その可能性を探って発見していくのが面白いというインゲヤードさん。少女のような眼差しの向こう側に、彼女の原動力となっているあくなき探求心を感じました。
――グラスやコップ、水差しといった、「水」を意識した器の制作が多いインゲヤードさんですが、なぜ水を意識した器を作ろうと思ったのでしょうか?水に対して特別な思い入れ、エピソードがあれば教えてください。
インゲヤードさん:
ストックホルムという水に囲まれた街で育ったので、水はとても身近なものですね。母が病気がちだったので、長い間、ストックホルム郊外の家に預けられたんですけど、そこは漁師さんの家でした。
生命の始まりは水ですし、水は生きていくために欠くことのできない必要不可欠なもの。安心して使うことのできる清潔な水が、どれだけありがたく大切なものか。多くの場合、私たちは忘れているのではないかと思います。飲み物としてもこれ以上のものはない。自然からのギフトです。
私の感覚では、ガラスといえばクリスタル。クリスタルは単にクリスタルガラス的な意味合いだけでなく、結晶という意味もあります。氷の結晶はまさに水。不思議なことに、私にとってガラスというのは水に近く、それと重なり合った素材であるという感覚があります。全く個人的ですが、ガラスと水がとても近いもの、似ているものだという感覚があるんです。
《VIKTIGT/ヴィークティグト》 2016年 イケア © Inter IKEA Systems B.V.
――IKEAのような大規模な企業向けのコレクションを手がけたインゲヤードさんですが、コラボ先を選ぶ決め手は何でしょうか?
インゲヤードさん:
IKEAは大企業ですが、「ヴィークティグト」のプロジェクトはクラフトの要素が強く、天然素材でのものづくり。期間限定だけど、大企業がどういったことをやるのかという点に興味がわきました。新しいことを知りたいと思っていました。中でも決め手となったのは、竹の職人さんとご一緒できるということですかね。職人同士、言葉がわからなくても、意思疎通ができるという仮説がありましたので、それが本当かどうか確認してみたいなと思ったんです。
(そしてそれはとても上手くいったようですよ!)
――今後、陶器(土)やガラス以外で、新しく挑戦してみたい素材はありますか?
インゲヤードさん:
ありとあらゆる素材を試してみたいわね(笑)今回、段ボールに挑戦しました(展覧会の展示和室で披露)。素材としては以前からとても気に入っていたので、一緒にやらせていただけませんかとお願いしました。
スウェーデンのある製紙工場を見たときに、これだと思いました。その工場は現在、イギリスの傘下に入っていますが、100年以上の歴史がある製紙工場です。段ボールをなぜやりたいかというと、ただ好きだからですね。素材を使って何か作っていくことで、新しいことを知り、新しい人と出会う。そしてその素材の可能性を自分で探って発見していくことが面白いんです。
和室での特別展示の模様
常に新しいものを知りたいという好奇心あふれるインゲヤードさん。彼女のような経験豊富な人でさえ、新しいものとの出会いは、不安になったり、うまくできるかなと思ったりも。そんな素直な気持ちを、記者発表の場や展示会場に設置されたモニター映像で吐露されているのを見て、自分を信じ、苦難を乗り越えていける真の強さを感じました。
キラキラと目を輝かせて、丁寧に話してくださるインゲヤードさんの、時折見せる少女のような表情がチャーミングで印象的でした。北欧区を始めるきっかけが、インゲヤードさんとの出会いだった、という話を本人にしてみたところ・・・!ブログに掲載していますので、そちらもぜひ。
「インゲヤード・ローマン展」は、東京国立近代美術館工芸館にて12月9日まで開催中!
日本・スウェーデン外交関係樹立150周年
インゲヤード・ローマン展
会期:2018年9月14日(金)~2018年12月9日(日)
会場:東京国立近代美術館工芸館
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日、10月9日(火)※10月8日は開館
http://www.momat.go.jp/cg/exhibition/ingegerd_2018/
▼展覧会レポートはこちら!
インゲヤードが誘う究極の北欧デザインがここに!「インゲヤード・ローマン展」開催中(12/9迄)
▼インゲヤード・ローマン展とは?
スウェーデンの国民的デザイナー日本初の展覧会「インゲヤード・ローマン展」(9/14-12/9)