2004年にファブリックブランド「OTTAIPNU」を設立し、ファブリックを中心に、2011年からスタートした傘シリーズ、カバン、ストールといったプロダクトを展開。自身のブランド以外にも、マリメッコやカンペール、ユニクロなど、国内外のブランドのテキスタイルプロダクトを発表し、家具や建築空間などのパターンデザインなども手掛けるなど、多岐にわたる活動で知られるテキスタイルデザイナー、鈴木マサルさん。
梅雨のシーズンに発表してきた傘シリーズが誕生して10周年を迎えた昨年は、アルテック東京ストアにて展示イベントが開催されました。今年は4月25日より、東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)にて、「鈴木マサルのテキスタイル展 色と柄を、すべての人に。」の開催が予定されていたのですが、緊急事態宣言により、開催中止となりました。
今回は展覧会のために、巨大なタペストリー生地を制作。他にも、これまで鈴木さんが手掛けてきた様々な色柄のテキスタイル作品が並べられました。一般公開不可となってしまいましたが、会場で鈴木さんにお話を聞くことができましたので、インタビューと共に会場の模様をお届けします。
埋められないかと思った会場。
大きなテキスタイルが可能にした。
鈴木マサルさんにとって過去最大規模となった今回の展覧会。初めに会場を下見した時は、「埋められないんじゃないかと思ったんですが、もしかしたら、大きな生地を吊ったら行けるんじゃないかと。大きな会場で大きな生地を作りたいという思いがあった」といいます。テキスタイルへの愛と信頼そのままに、会場を見事に鈴木マサル・ワールドに染め上げました。
新作の巨大タペストリー生地については、とにかく大きな生地を作ろうと思ったということで、普段作る生地より幅も大きめ。「真っ黒い空間に色を入れたらすごく映えるだろうなと思った」と話していた鈴木さんですが、まさにそのとおり。漆黒の空間に、色鮮やかなテキスタイルが浮かび上がり、異空間に迷い込んだかのよう。
会場を見てどうしようかなと思っていたときに、鈴木さんの昔の先生が、「工事現場みたいなところでも、1枚ぱっと生地を広げるだけでパーティー会場のようになるんだよ」と言っていたのを思い出したといいます。「キレイなでっかい生地を広げたら華やかになるだろうなと思って、それでやろうということになりました。テキスタイルなら可能にしてくれると思って」
過去作品から新作まで。新作はこの巨大なテキスタイル。
雨傘はこれまでの作品を全て展示。「購入された方の傘は必ずこの中にありますよ」とのこと。
傘やこれまでにデザインした原画を壁に張り巡らせているコーナー。自作のアートパネルも。手で描くことが好きだとか。
テキスタイルデザイナー、鈴木マサルの歴史が詰まった、鮮やかな色柄のテキスタイルたち。
生活に彩りや小さな幸せを与えてくれる。
「テキスタイルっていいな」を伝えたい。
毎年、傘展やテキスタイル展など、いろんな場所で作品を発表している鈴木さんですが、ブレず、長く作品づくりに情熱を持ち続けられるのはなぜか。何か秘訣があるのかどうか尋ねてみたところ、意外な答えが返ってきました。
「実は、何作っても、何をやっても、『完璧だ』という経験がまだないんですよ。満足ができない。『こうすればもっと良くなるかも』というものの連続で。いつか(完全に満足)出来たら、しなくなるかもしれません(笑)作ったもので、これはいい出来だなとか、うまくいったなというのは、もちろんありますが、デザインにしても、展覧会にしても、こうしたらもっと良いものが出来るかもという思いが常にあります。欲張りなんですよね」と笑顔。
自身を、「世の中のニーズを汲み上げて作っているわけではないので、こういうものを取り入れたらいいんじゃない?って紹介する立場」だと分析。「キレイな色を生活に取り入れたら、もっと楽しくなると思いますよと、いつもそういった気持ちで作っています。テキスタイルっていいな、というのが伝われば」
会場にも、空間に色があること、空調でちょうどほどよく、生地が揺らいでいるのを見ていても、本当に癒されます。昔から布は人にとって身近で親しみのある素材。鈴木さんが作る彩りのあるデザイン、テキスタイルは、私達の生活に小さな幸せや喜びを感じることを教えてもらっている気がします。
楽しみなのは、テクノロジーの進歩。
想像もしない場所へと連れていってくれる。
今後チャレンジしてみたいことを鈴木さんに尋ねてみると、楽しみで仕方ないといった感じで答えてくれました。それは、デジタルプリントの進化。どんどん技術が進化していっているので、自身のデザイン活動の幅も広がり、「本当に楽しみでしかない」といいます。
新作の巨大テキスタイルもデジタルプリントを使用。あの大きさは、デジタルプリントでしか出来ないのだとか。デジタルプリント技術が進化することで、思ってもみなかった、予想もしていなかったところに色柄を展開していくことができます。
例えば、「(埼玉県飯能市のムーミンバレーパークとメッツァビレッジがある)メッツァのエントランスロードの道いっぱいに自分がデザインした色柄が広がるなんて」と鈴木さん。道いっぱいのデザインもデジタルプリントのシートで貼られていました。また、岡山で走っている「SETOUCHI TRAIN」(JR西日本)のラッピング車両もデザインを担当。「想像してもいなかったことに挑戦していくことができます。無限ですね」と、技術の進歩により、活動の幅や可能性が広がっていくことに喜びを感じていました。
キレイな色を見て、不愉快になる人はほとんどいない。虹を見たら、キレイだなと感じるように。色や柄は、気持ちを豊かにしてくれて、ポジティブな気持ちにさせてくれるもの。「空間にキレイな色が広がっているのって、いいんですよね」と、新しい挑戦に胸をときめかせている鈴木さん。また新たな色と柄に出会える日が今から楽しみです。
鈴木マサルのテキスタイル展 色と柄を、すべての人に。
会場:東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)
※開催中止
▼鈴木マサル関連情報
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<会場展示>